ギュスターヴ・モロー展

自販機部門の船木です。

 

4月30日をもって前天皇が生前退位なされて上皇におなりになり、5月1日に前皇太子が第126番目の天皇が即位されて、第248番目の元号「令和」が始まりました。前回の元号「平成」のときは、新元号になったその年の秋に「ベルリンの壁」が壊されて共産主義陣営の国家が次々に崩壊しました。その後、ソ連が崩壊し、冷戦が終結する一方で、世界はパソコンとインターネットと携帯電話の普及で、グローバル化が一挙に進み、ネット回線さえあれば、どこにいても世界と繋がれる時代になりました。しかし、その一方で、いろんな場所でテロや自然災害も多発し、安全神話というものが崩れ、グローバリズムからの揺り戻しのように、いろんな国でナショナリズムが復活し始めてきているような印象もあります。果たして、新元号「令和」というこの新しい時代は、世界はどのように動いていくのでしょうか。

 

さて、この平成から令和へとまたがって2019年4月6日(土)から6月23日(日)まで、東京のパナソニック汐留美術館で開催されているのが、「ギュスターヴ・モロー展~サロメと宿命の女たち~」です。ギュスターヴ・モロー(1826~1898)は、フランスの象徴主義の巨匠で、主に聖書や神話に題材をとった幻想画家として知られています。モロー展は、この後、巡回展として、大阪あべのハルカス美術館で2019年7月13日(土)から9月23日(月・祝)まで、 福岡市美術館で2019年10月1日(火)から11月24日(日)まで開催予定になっています。

 

NHKプロモーション「ギュスターヴ・モロー展― サロメと宿命の女たち ―」

 

ギュスターヴ・モローが活躍した時代

 

モローが活躍した19世紀後半は、ヨーロッパでは産業革命によってすごい勢いで第2次産業が発展していった時代であり、物理学ではエネルギーの概念が登場し、ようやく古典力学が完成して、まさに、物質主義・現実主義の潮流が世界中を呑み込もうとしていました。一方で、電磁気学も整備され、相対論や量子論が登場する土壌も形成されていました。そんな時代に活躍したモローは、人間の幻想的な内面を描くことで、外の世界に現れ始めた物質主義的側面とは異なる現実を見い出そうとしていたのかもしれません。

 

近代的な意味での「人間」と言えば、デカルトの「われ思う、ゆえに、われあり」というように、理性的に思考することで自己存在を認識していくことが人間であることのように思われますが、一方で、感情も伴って、理性と感情が二項対立するような側面もよく表れます。

 

オイディプスとスフィンクス

 

モローは、二度のイタリア旅行を終えて帰国後、そうした人間の内面にある二項対立的なものを炙り出すように、《オイディプスとスフィンクス》(1864)や《サロメ》(1876)といった作品を描きます。このオイディプスはギリシア神話の登場人物ですが、ソフォクレスの戯曲『オイディプス王』が有名です。また、オイディプスはエディプスとも呼ばれて、精神分析医ジークムント・フロイトによって「エディプス・コンプレックス」の語源になりました。スフィンクスと言えば、ギリシャ神話などに登場する獅子の身体に人間の顔を持った怪物であり、ソフォクレスの戯曲『オイディプス王』の中では、テーバイの山で、旅人を捕まえては「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足。これは何だ?」という謎かけをしては、答えられなかった者を食っていました。この謎かけはあまりにも有名ですね。オイディプスは「その答えは人間だ」と言って正解し、スフィンクスは答えられたショックで谷底に身を投じました。このときのオイディプスとスフィンクスが出会ったときのワンシーンを描いたのがこの《オイディプスとスフィンクス》という作品だと言えます。

ギュスターヴ・モロー《オイディプスとスフィンクス》(1864)

ファム・ファタル(魔性の女)

 

今回の展覧会では、《オイディプスとスフィンクス》は公開されませんが、《一角獣》《サロメ》《出現》《踊るサロメ、通称入れ墨のサロメのための習作》《ヘラクレスとオンファレ》《セイレーン》《エウロペの誘拐》といった、身近な女性から「ファム・ファタル」(魔性の女)まで多様な女性を描いた作品が展示されるようです。なお、サロメは、オスカー・ワイルドの戯曲として有名で、恋する人ヨカナーンの首を持って踊り狂う魔性の女サロメの姿は強烈です。

 

パナソニック汐留美術館「ギュスターヴ・モロー展 ― サロメと宿命の女たち ―」

 

というわけで、滋賀県からJR京都経由新幹線で東京まで行き、JR新橋駅付近のパナソニック汐留美術館にお出かけになる方は、是非、お近くのチケットライフの自販機もしくは店舗にて格安のチケットをお求めください。各店のスタッフ一同、みなさんのご利用をお待ちしております。