大阪市立自然史博物館

自販機部門の船木です。

 

さあ、いよいよ、以前ここのブログ記事でも紹介した、特別展『生命大躍進』が関西にやってきます。NHKスペシャル「生命大躍進」との連動企画イベントとして、国立科学博物館で開催され、TVなどでも何度か採り上げられていた、あの話題の特別展です。桜のシーズンは花見客でもにぎわう長居公園の敷地内にある大阪市立自然史博物館において、この4月16日から開催されます。そろそろ暖かくようやく春めいてきたきょうこの頃、ぽかぽか陽気に誘われて、ちょっと自分の細胞の奥深くに眠っている古代生物のDNAを垣間見るたびをしてはいかがでしょうか?

大阪自然史博物館

大阪市立自然史博物館(出典:ウィキペディア)

 

大阪市立自然史博物館ホームページ

 

古代生物への興味

 

私が初めて大阪市立自然史博物館を訪れたのは確か小学生の頃だったと思います。当時の私は、恐竜を始めとする古代の生物にすっかりはまっていて、「三葉虫」「アンモナイト」といったポビュラーな古代生物の名前はもちろん、「魚竜」や「首長竜」といった恐竜の親戚のように持っていた動物や、石炭紀の「リンボク」「フウインボク」といったシダ植物の名前まで知るようになっていました。まあ、当時の私は、まるで仮面ライダースナックのカードでも集めるような感覚で、様々な古代生物の名前と姿かたちを知っていくことが大いなる好奇心の原動力になっていたのかもしれません。

 

そして、ついに、小学校の図書室の本で学ぶ知識だけでは飽き足らず、関西で、古代生物の実際の姿が想像できそうな、実物大の骨格や復元模型、化石などが展示してある大阪自然史博物館の存在を知って、父にせがんで連れて行ってもらったというわけです。

 

大型復元骨格たちの歓迎

 

実際に長居公園を歩いて、大阪市立自然史博物館にたどり着くとわかりますが、いきなり玄関前ポーチで、私が小さいときに訪れたときにはなかった、実物大のナガスクジラの骨格標本が私たちを歓迎してくれて、これだけでも結構興奮します。その他にも、中に入ると、ステゴサウルスなど恐竜たちやデスモスチルス、ナウマンゾウ、マチカネワニといった大型動物たちの骨格が所狭しと集められ、それなりに見応えがあります。

 

大阪市立自然史博物館では、「身近な自然」「地球と生命の歴史」「生命の進化」「自然のめぐみ」「生き物のくらし」と題した5つの常設展示室が設けられていて、とにかく化石動物たちの復元骨格や現生動物たちの全身骨格標本が多く、いい意味で「骨、骨、骨」のオンパレードが見ものです。

 

地球の歴史のおさらい

 

さて、改めて、特別展『生命大躍進』の舞台となる地球の歴史をざっくりと垣間見てみましょう。私たちの宇宙は、138億年前にビッグバンによって誕生したと言われ、素粒子物理学の発展で少しずつわかってきたように、最初は電磁気力・弱い力・強い力・重力と呼ばれる自然界の4つの力が一つに統合されていました。それが分化し、原子核が作られ、原子を構成するようになり、やがて様々な元素が生まれて、、超銀河団、銀河団、銀河、恒星が形成され、超新星爆発により星間物質が飛散し、私たちの住む天の川銀河の太陽系が誕生したのが約46億年前だと言われています。地球の歴史はまさしくそのときに始まったわけです。私たちが学校で習った地質時代と言えば、主に、古生代・中生代・新生代という3区分でしたが、古生代は無脊椎動物や魚類・両生類の時代、中生代は恐竜などの大型爬虫類たちの時代であり、新生代が哺乳類及び人類の時代だなどと教わったのを覚えています。これら古生代・中生代・新生代の地層からは、多種多様な生物たちの化石が発掘されることから、まとめて顕生代と呼ばれます。顕生代は、約5億4,200万年前から現在までの期間を指します。それ以前の冥王代・始生代・原生代は生命が存在しないか、硬い殻や骨を持たない生物が多く、化石が残りにくい時代だったと言われます。生命は始生代の初めのころ、約38億年前に誕生したようです。

 

生物と言えば、DNAの自己複製→RNAへの転写→アミノ酸への翻訳といった機能を持ち、閉じた生体を持っているのが生物のイメージですが、最初の頃はどこまでが生体で、どこまでがそれを支えている環境なのか明確な区別がつかないような、ウイルスのような境界の曖昧な存在だったのかもしれません。最初の生物は熱水噴出孔のような過酷な環境で生まれた古細菌(アーキア)だと言われます。私たち人類のように、核を持った細胞で生体が構成されている生物は真核生物と呼ばれますが、これは古細菌に、ミトコンドリアや葉緑体の祖先と言われる真正細菌(バクテリア)が入り込んで共生体となったものではないかと言われています。そうした微生物段階から長い時間をかけて生物は進化・発展してきたわけですが、約25億年もかけて多細胞生物になったのではないかと言われます。

 

危機が生物を成長させる?

 

生物は何かの偶然で誕生したとしても、植物の葉緑体の起源とも言われるシアノバクテリアが放出する「酸素」という猛毒のおかげで、嫌気性生物たちは危機的状況に陥り、それに成り代わって好気性生物たちが台頭してきて、ところが、今度は全球凍結(スノーボール・アース)と呼ばれる地表のほとんどすべてが凍りついてしまうという事態に見舞われます。こうした危機を乗り越えるべく、生物は多様化の道を歩んだのかもしれません。「エデンの園」を文字って「エディアカラの園」と呼ばれる新原生代エディアカラ紀には、硬い殻や骨は持たないものの、多種多様な生物へと分化し始めていました。そして、いよいよ現在の35ほどある動物門を一斉に開花させる「生命のビッグバン」とも言われる古生代カンブリア紀へと突入するわけです。これは植物が持っていた光を感じる受容体であるロドプシンを作り出す遺伝子を、ある動物が取り込んで、いわゆる「目」を作り出したのが原因ではないかと言われます。「目を持つもの」と「目を持たざるもの」では、格段と情報の量も質も異なる結果をもたらしました。この結果、生物たちは激しい生存競争の渦中へと投げ込まれることになります。食うか食われるかの世界の出現です。その後も、地球上の生物たちは、「ビッグ・ファイブ」と呼ばれる5度にわたる大絶滅を経験してきました。特に、約2億5100万年前の古生代ペルム紀末には、すべての生物種で見ても90パーセントから95パーセントという、地球史上最大規模の大量絶滅があったようです。隕石が降り注いで恐竜が絶滅したと言われる、有名な中生代白亜紀末の大量絶滅でさえすっべての生物種の70パーセントほどだったと言われますから、ペルム紀末の大量絶滅がいかにすさまじかったかわかります。そういう意味では、これまで生物は何度となく、危機的状況をくぐり抜けて、今日まで生命を繋いできた存在たちと言えるでしょう。

 

改めて『生命大躍進』

 

というわけで、以前のブログでは、生命大躍進の一つとして、古生代カンブリア紀に「目が開いた」ことを採り上げましたが、NHKスペシャル『生命大躍進』では、さらに、私たち脊椎動物は、ナメクジウオのような頭索動物の祖先のようなものから、同じような遺伝子セットを4つようになったことで、節足動物の目のような広角的な複眼ではなく、むしろ望遠的なカメラ眼を始めとして、その後の脊椎動物の進化の要因となったのではないかということを説明していました。そして、もう一つ、卵を体外に産み落としていた爬虫類から哺乳類へと進化していく過程において、卵を母胎内で孵し、育てるために、胎児を自分とは違う存在として異物視して攻撃しないように、レトロウイルスの機能を遺伝子として取り込みました。このように、「植物のロドプシン遺伝子を取り込んで外を見る目が作った」「遺伝子セットを4つ持つというゲノム重複によって高性能なカメラ眼のような機能をもてるようになった」「レトロウイルスの機能を取り込んで母胎内で胎児を育てることができるようになった」といった、まさに「生命大躍進」をもたらした革命的出来事があったようです。

 

NHKスペシャル『生命大躍進』

 

この特別展『生命大躍進』では、「生命大躍進」をもたらした出来事の説明なども交えて、地球上においてかつて展開された、人類に至るまでの生命の一大歴史絵巻を、化石や復元模型、パネル展示などを用いて描いています。

生命大躍進展

大阪市立自然史博物館 特別展『生命大躍進』

(出展:http://www.seimei-ten.jp/index.html)

 

というわけで、昨年東京上野の国立科学博物館までは遠くて行けなかったという関西在住の方は是非、この機会に、友達同士や家族連れで、あるいは、気軽にひとりでも、出かけてみてはいかがでしょうか?